こんにちは、にどねゆうきです。

かつてInformation Technology、略してITをIt(イット)と読んでしまった方が居たのも今や昔。
(調べたらもう20年前でした)



その後情報社会はすっかり定着。
今や当たり前すぎて誰も声にも出さなくなりました。


一人ひとりがスマートフォンという超進化したPDAみたいな情報端末を持ち、
私たちの買い物はPOS連携でCRMシステムに保存されていきます。
考えてみたらすごい未来が訪れているわけですね。

そうした日々生み出される無尽蔵のデータを活用した、
データドリブンな仕事の仕方はすっかりビジネスの基本となっています。



「勘」や「経験」という、よく言えば一人ひとりが培ってきたスキル、
悪くいえば年長者の偏見によって振り回される時代は終わりを告げ、
会議はまずデータをもとに話し合うことから始まるようになりました。



  • データドリブンだけどもったいない会議

しかし一難去ってまた一難。そこで生まれたのがまた新たな問題です。
例えばプロモーション戦略など、ある件について意思決定をする会議があったとします。
あなたは部下や同僚に判断材料を持ってくるように伝える。
会議が始まり、材料を見せてというと画面共有されたのはExcelのクロス集計データとグラフです。

「ここから何が言えそう?」と聞くと始まるプレゼンテーション。
応酬もありつつ、20分使って現在の課題が分かりました。


「じゃあそこから何が出来そう?」
30分を使い、みんなでブレインストーミングをしてアクションプランがいくつかが出来ました。


アクションプランごとに予算と納期と工数を大まかに確認し、
あわせて60分が経ったので、
じゃあ期待される効果をまた計算して次回の会議で決定しようかとお開き。

結局また会議をすることになってしまいました。

これでは時間がもったいない!!



※用語集








  • ビジネスにデータを活用する際のコミュニケーション

こうしたやり取り、いったい何が問題でこうした非効率が起きているのでしょう。

ツールの問題でしょうか。
実際、ツールによって改善できることはたくさんあります。


「じゃあBIツールを使えば、その場でインタラクティブにデータが探せるから解決だね!」


私もそういう柔軟な会議が好きなので、ぶっちゃけた話そうすることが多いのですが、
マーケティング部内でならまだしも、
経営層と話したりするときにはあまり好ましくないのかなと思います。

(自分でふだんそうしていてアレですが)


みんな大変ですが経営層の皆さまは一段と忙しいわけで、
1分1秒が惜しい彼彼女たちに対しては、
とにかくスンッと理解いただき早々に本題に入ることこそが
結果として会社全体の生産性を最大化するのではないでしょうか。


先程の会議で言いますと、何かを決定する会議ということになれば
元データとそこからいえる現状の課題、
それを打破するアクションプランとその理由、
そしてその根幹にある思想みたいな部分まで含めて持ってきて初めてパッと物事が決まるわけです。


つまり「材料持ってきて」という言葉に対しての、
指示を出す側と受ける側のイメージの違いがさきほどの悲劇を生むわけですね。

要するに、これはコミュニケーションの問題なのです。

根本的に間違っているわけではないですし、みんなもう大人だからいちいち注意とかしなかったりする。でもやっぱり時間がもったいないですよね。


そんなわけで、こうしたデータにおけるコミュニケーションを整理し、
お互いに「なんか違うんだよな・・」「そこじゃなくて・・・」と若干モヤモヤするやり取りを激減させる考え方が、「DIKWモデル」です。



※用語





  • 「データ・情報のレベル」に焦点を当てた「DIKWモデル」

今回紹介させて頂く本はこちら。
元ソフトバンク社長室 室長(現在は独立)の三木雄信さんが書かれたこちらの一冊です。






今回の会議の事例では、意思決定に使用するデータ、すなわち「情報」のレベルについて
お互いが一致していなかったことが原因でした。

つまり、指示を出した方はデータとそれに基づくアクションプランや考えまでを求めていて、
指示を出された側は現行プランの実績データを出してこればよい、と考えていたのですね。

これが「情報のレベル」の違いです。
こちらについて考えていきましょう。


 
おそらく多くの人は、「情報にレベルなんてあるの?」と思ったでしょう。

多くの人は「情報」という言葉の定義をあいまいなまま使っていますが、
実はその中には次の4つの意味が混在しています。

「Data(データ)」:それ自体は意味がない数字や記号など

「Information(情報)」:データを整理し、解釈や意味を持たせたもの。「who」「where」「what」「when」に答えられるもの

「Knowledge(知識)」:情報を体系化し、まとめたもの。「how」に答えられるもの

「Wisdom(知恵)」:価値基準を示すもの。「why」に答えられるもの

このように、ひと口に「情報」といっても、さまざまな性質を持つものが混在します。
(p77,三木,2017,すばる舎)



日々当たり前にやっていることだとは思いますが、
こうして体系化して言語化すると頭の中がスッキリします。

先ほどの例ではデータから得られる「Information」や「Knowledge」が欲しかったのに、
生の「Data」を持ってきてしまったということが起きてしまったわけですね。

噛みあってないやつです。



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アメリカのラッセル・L・アコフという学者は、
この4つを明確に区分したフレームワークを提唱しました。
それが「DIKWモデル」です。

このモデルで注目すべき点は、「情報」を「組織の階層」に当てはめたことです。

その人が組織の中でどのポジションにいるかで、求める「情報」の種類は変わります。
「DIKWモデル」では、それを明快に示しています。

・「Data(データ)」:「何がどうなのか?」=実務レベル=担当レベル

・「Information(情報)」:「どういう意味か?」=戦術レベル=管理職レベル

・「Knowledge(知識)」:「どう展開すべきか?」=事業戦略レベル=事業部長レベル

・「Wisdom(知恵)」:「なぜ当社がその事業をするべきか?」=理念・全社戦略レベル=社長取締役レベル

「DIKWモデル」と組織の階層は、このように対応します。

2021_05_23 12_00 Office Lens

(略)
課長は、「Information(情報)=管理職レベル」の情報を求めています。
なのに、あたなが「Data(データ)」しか渡さなければ、「これじゃ不十分だ」「何が言いたいのかわからない」と突き放されるだけです。
(略)
裏を返せば、「DIKWモデル」にもとづいて相手が求めるものを伝えれば、一発でOKがもらえるということです。

できれば自分が直接話す相手の階層に合わせるのではなく、「2段上」の情報を渡すのがベストです。
(略)
あなたが課長に渡す情報は、課長が自分の上司に説明をするためにも使われます
よって、最初から2段上の情報を渡しておけば、あなたの報連相をそのまま課長が事業部長に伝えたときも、即座にイエスを引き出せます。
(略)
「DIKWモデル」を理解すれば、組織の中で上に立つ人間を上手にコントロールし、自分がやりたい提案やアイデアをスピーディーに了承させる「キラーコンテンツ」を作ることが可能になるのです。
(図含,p78-81,三木,2017,すばる舎)



言ってしまえば、「少し先のことに目を向ける」とそれだけの話なのですが
「相手が分かってくれる」「そこから先は相手の仕事」ではなく、
少しの思いやりを持ってひと手間をかけ
DIKWモデルにおける情報のレベル感を調整することが、
結果として自分のやりたいことを仕事で実現できることに繋がります。




  • 情報のレベルとビジネスコミュニケーションにおける思いやり


DIKWモデルでレベル分けをされている「情報」の中身。
これについては、実は皆分かっていないわけではなくて、
むしろ当然に理解しているんですよね。
DataどころかInformationもKnowledgeもWisdomも、
例えば現場で仕事をしている者からすればむしろ毎日直面しながら働いているわけです。

ところがそれこそこのDIKWモデルのように、
いざ伝えるという場になったとき「現場の私はデータまで」なんて変に線引きをしてしまうと、
上手くいくものも上手くいかなくなる。

わざわざピラミッドの図を書いてまで表現する必要があるほど、
データとそこから派生していくビジネスに必要な要素は階層によって変わってしまいます。


データドリブンな時代になり、長年の経験や勘以上の判断材料が手に入るようになると、
ビジネスにおける現場第一線メンバーの優位性はこれまで以上に高くなりました。

そんなメンバー層に力がある現代だからこそ、
確かに普段の「わたし」にとっては必要のないものかもしれませんが、
仕事先を思いやり、その「わたしではない」階層の情報を整理し渡してあげる思いやりが大事なのではないかと思います。


データを元に未来を変えることが出来るかどうかは
こうしたコミュニケーションの積み重ねにかかっています。
小難しい話ではなく、結局は小さな日常での思いやり

ぜひDIKWモデルを活用してみて下さいね。