こんにちは、にどねゆうきです。


経済学部出身です。
今回は行動経済学の世界でもわりと有名な「サンクコスト(埋没費用)」について見ていきましょう。

学部の最初の授業で習うのがこの「サンクコスト」。

私にとっては「大学の講義は高校の授業とは全然違う!何て面白いんだ!!」と勉強の楽しさを教えてくれた偉大なテーマです。
しかしながら入学1ヶ月もするとその勉強熱もすっかり忘れてしまい、サークルにバイトに飲み会に明け暮れてしまうわけですから、まったく大学生というのは難しい4年間です。


さて、今回も橋本先生の本を読んでいきます。








  • 泥沼にハマっていく「サンクコスト」の呪縛


まずは言葉の定義から。

すでに使ってしまって、二度と戻らない時間やお金、労力などを「サンクコスト(SUNK COST)」と呼ぶ。人間がサンクコストにこだわってしまい、それまで以上に時間やお金、労力を費やしてしまうことがある

これが、サンクコストの呪縛である。(橋本,2014,p29)



端的にいうと「もうこんなにつぎ込んじゃったし...と言ってさらなる泥沼にハマっていくやつ」です。


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どう見てもヤバイのに陥りがちなやつです。


だから怖いのですよサンクコストは...

多くの人にとって一番ありそうな例は「わりと長い期間付き合っていた彼氏/彼女がヤバいやつだったときに認められずズルズルいく現象」でしょうか。

お金だけじゃないですからね、サンクコスト。
むしろよく当てはまるのは「時間」ではないでしょうか。

とはいえ恋は盲目。アラサーに言えることは、せいぜい友達の言うことは聞いておけということぐらいです。


続きます。


例として、しばしば挙げられるのが、イギリスとフランスが共同で開発した、超音速旅客機「コンコルド」の開発にまつわる話だ。

これは1969年から2003年までの間に定期国際運行路線に就航した、唯一の超音速民間旅客機であった。速さを追求した、美しく個性的なデザインで人気を博した。

250機の製造で採算に乗ると計算されており、これを目指して開発が進められた。

しかし、その間、徐々に騒音や衝撃波(ソニックブーム)などの問題が表面化し、航空業界も大量輸送と低コスト化へと流れが変わった。

最終的にはわずか16機のみで生産は終了したが、この過程では大きなコストが投じられているという理由で、開発を中断することができなかったと言われている。

このようにサンクコストに縛られて、途中から辞めることができない例は、自治体の公共工事や企業のプロジェクトに至るまで、さまざまな場面で見られる

「覆水盆に返らず」と割り切ることができないのは、人も企業や自治体も同じだ。(橋本,2014,p29-30)




明らかにやばそうだったのにやめられなかった例「コンコルド」ですね。

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「速ければ売れるだろう」という見込みで始まったものの、明らかにそんな感じでもなくなったと。けれども止められずに開発を進めてしまったわけです。恐ろしい話...



つい最近でも、超大型機のエアバスA380で似たようなことが起こっています。
こちらは「人がいっぱい乗れれば売れるだろう」ですね。


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(そんなことないよ!A380の技術はたくさん活かされているんだよ!という記事も紹介します)






  • ソーシャルゲームとサンクコスト

ソーシャルゲームにおける「やめられない感作り」においても、このような心理が影響している。コンプガチャの場合であれば、上記のケースとまったく同じ心理が働く。

アイテムを途中まで集めたならば、完全に集めなければ、その時点までに有料で購入したアイテムが無駄になってしまうのだ。

(中略)結果的に一つのゲームにハマりだすと、それまでプレイしてきた時間や寝ないで頑張った労力などがすべてサンクコストとなり、なかなかやめることができないという悪循環に陥ることになる。

「サンクコスト」は、自分が選んだ選択に、自分自身が縛られることだ。(橋本,2014,p30-31)



いまはコンプガチャ規制もありますが、昔はなかなかひどかったですね。
個人的にソーシャルゲームの儲けよう感がすごく苦手なのですが、当時のコンプガチャの暴走がいまだに焼き付いているからな気がします。

ソーシャルゲームはお金もですが、意外とプレイ時間がかかるものも多い。
「同調効果」の人間関係、つながりもあるのでついつい触ってしまうんですね。

掛け算の効果でとにかく続けてしまうソシャゲ。
これは覚えておいたほうがいいかもしれません。






  • なかなかできない「損切り」
これとは逆に、選ばなかった選択で、得られたはずの利益を「機会費用」と呼ぶ。サンクコストとは逆に、機会費用は軽視されがちだ。

ゲームに使ったお金や時間を他の趣味や、友人たちとの交流に使っていれば、もっと楽に時間が過ごせたかもしれない。

しかし普通の人間にはこのような考え方をするのは難しい。結果的に現状が維持される。さらに、このサイクルにはまり出すと「損失先送り効果」により、抜け出すことが困難になる。

サンクコスト効果によってハマってしまった後、これをやめるのはそれまでに費やしたコストを損失として確定することを意味する。
従って、なるべく先延ばししたいという意識が働き、決断を妨げるのが「損失先送り効果」だ。

よくある例として、投資の「損切り」がある。

一度買った株が値下がりをして、いつ値を戻すのか分からないとしても、株を売却して損を確定するのは、精神的にストレスを感じる行為だ。

人間は、損失を確定させるタイミングを、可能な限り先に伸ばそうとする性質があるのだ。(橋本,2014,p31)



なぜ人は損切りできないのか、という問いについての答えはシンプルで「人は損を確定させることに対してストレスがあるから。だから先送りする」という理由です。

人が人であるからというところがその所以ですね。ゆえに株でもロボット取引は強い...!!!
ニセアカギ的にきちんと勝っていきます。

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「大切なのはアベレージだ」





この「サンクコスト」や「機会費用」、「損失回避」といった人間のクセについて理解しておくべきことは、つまり人間は皆「泥沼にハマりやすい」性質を持っているということ。

そして「いま泥沼にはまってるぜ!」という精神状況でハマるわけではなく、なんとか理由や言い訳を付け、ハマっていく自分を正当化してそれを続けていくということです。

つまり自分の思考には常にバイアスというメガネがかかっていて、しかもそれを外せないということですね。



そんな厄介なクセを持ちながらも世の中を楽しく生きていくために必要なのは、自分を客観視すること人の話を聞くこと

「よく聞くやつやなあ」という感じですが、大事なことだからよく聞くのです。

そして自分を客観視するヒントは自分への問いかけをしてみることです。
何か自分が強情になってしまっているものがあるのなら、「なんでそんなにこだわるの?」と自分に問いかけてみましょう。もしかしたらそれはサンクコストの呪縛によるものかもしれません。



「保有効果」「同調効果」そして「サンクコスト・機会費用・損失回避」。

人間の思考なんていい加減なものです。絶対的なものでも、論理的なものでもありません

あんまりムキになりすぎず、ゆるふわな感じで毎日楽しみましょう。