こんにちは、にどねゆうきです。

先日からの記事では「#シェアしたがる心理」を読み解きながら、
絵文字や画像・動画を使った「ビジュアルコミュニケーション」、ならびにSNSで起きる「シェア」そのものについて考えてきました。


▼ビジュアルコミュニケーションについて(5月5日)



▼シェアについて(5月6日)


今日の記事では、シェアと並ぶもう1つのSNSの核。
「いいね」について考えていきたいと思います。

ハートマークとサムズアップ👍、令和の人間にとってこの2つほど心を揺れ動かすものはないのではないでしょうか。


なぜ人はいいねをするのか、どんな要素がいいねをされるのかについて考えてみたいと思います。

なお、こころを読み解くのであって「いいねを増やす方法!」みたいな記事では一切ありませんのでご注意ください。(そんな方は意識高い系のブログをどうぞ)





今回も「#シェアしたがる心理 #SNSの情報環境を読み解く7つの視点(天野彬 著)」を読んでいきます。




・「パッと見のきれいさ」でのいいね👍❤


自慢はそれが承認されることによってこそ中毒的な快感を生む
その快感は私たち一人ひとりのアイデンティティを刺激するのだ。

ここまで見てきたように、いまやシェアと切っても切れないような情報空間の中に身を置きながら、私たちのシェアしたがる心理には、SNSでのいいね!やコメントなどインタラクションをたくさん引き起こしてくれる「SNS映え」の要素が深く関係している
(略)
ではそのSNS映えを解剖するとどのような要素が見い出せるのか。
私見では、2つの基底的な要素に分解できる。


(A)存在としてのSNS映え:美しさや驚きを感じさせるフォトジェニックさ

(B)意味としてのSNS映え:いいね!したくなる文脈性が含まれた体験やシーン



ここで(A)として挙げたように、まず画として映えるようなフォトジェニックな対象が含まれていることはビジュアルコミュニケーション上、とても大切だ。

いわば存在としてのSNS映えという視点。

こうしたトレンドに棹差す(にどね注:さおさす…流れに乗って,勢いをつける)ようにして、
例えばお菓子や飲料に関するパッケージ開発、
さらにはカフェやレストランなどでの店舗設計やメニュー開発が、
シェアしてもらいやすいものになっているかどうかという視点でどんどん進められている。

あえて切って断面を見せることでインスタ映えする天ぷらというのものあるし(伝統的な和食にも変化の波が及んでいる)、
最近ではビタミン剤(!)でさえもインスタ映えすることが圧倒的な競争優位を築くことに繋がっているのだ。
(p77-78,天野,宣伝会議,2017)



まず一つ目の「映え」は非常にシンプルで、いわゆるフォトジェニック=写真映えです。







こちらの「47都道府県別インスタ映えスポット」や「絶景イラスト」で紹介されているような、シンプルパッと目を引く画像・動画にはいいねがつきやすい傾向があるということです。
これが1つ目の「存在としてのSNS映え」です。


英語で「インスタ映え」はinstagoodなので、「#instagood」でタグ検索すると世界中のフォトジェニックな写真を見ることが出来ます。
(こんなことが出来るのもビジュアルコミュニケーションならではですね)

instagoo

(instagood写真だけを集めたパクリアカウントまであったりします)


インスタグラムだけでなく、つい最近の話ですがアプリ版のTwitterでも画像が縦長表示されるようになり一気にフォトジェニックな画像の投稿が増えました。


パンケーキやナイトプールの写真はあまり見かけませんが、Instagramと同じように絶景写真やペット写真は人気を博しており、
さらにTwitterならではの要素としておもしろ画像イラストの投稿がさかんに行われています。



#縦長表示されるようになったしお気に入りの縦長画像貼ってけ

#縦長が表示されるようになったから縦画像1枚で勝負する


あたりのハッシュタグではたくさんの画像が投稿されており、新しいInstagramのような様相になっています。
TwitterはUI自体も変化し、上部にエフェラル(消える)投稿、メインに画像フィード投稿と拡散向きなInstagramみたいになりつつありますね。


Twitterの売りは140文字のリテラルコミュニケーション(文字によるコミュニケーション)のはず。なんでこんなことに?と不思議になりますが、これがまさに、前々回の記事でふれたビジュアルコミュニケーションが強い力を持っていることを示しています。


発信の敷居が低く、受け取り手が多いビジュアルコミュニケーションへの流れは不可逆的であり、今後もTwitterは画像・動画共有が使いやすい形に進化していくと思われ、その際前者の「存在としてのSNS映え」を強調するような、より画面を大きく使ったUIとなることが予想されます。



「うらやましくなる雰囲気」でのいいね👍❤


(にどね注:(B)意味としてのSNS映え:いいね!したくなる文脈性が含まれた体験やシーン

もう1つは(B)のような意味としてのSNS映えという視点がある。

ここでは、どんな体験がそこに刻印されているかが問われている。
イメージとしては、既に若年層たちにとってあまり使われない言葉になりつつあるが、「リア充」というものに近い。

うらやましがられたり、投稿することでワンランク上感を出せたり、そのような仲間内での承認や評価付け(ピア・レビュー)(※にどね注:ピアとは同僚のことで、ここでは仲間内という意味)に関連する。

写っているものは日常的な、何もスペシャルなものでなくても――(A)の存在としてのSNS映えには該当していなくても――楽しそうに友達が集合して笑顔で写っているような写真にはいいね!が贈られる。

それはその写真に刻印された体験の持つ意味がSNS映えするものであるためだ。
(p78-79,天野,宣伝会議,2017)



もう一つは、その写真自体はとくに映えるわけではないけれど
その写真の持つ「意味」が映えているというものです。

多くの場合、これは「友達がいる」「仲間がいる」「恋人がいる」といった、自分自身の承認状況が「意味」となってきます。


みんなでBBQをしたときに撮った写真や、たくさんの視聴者が集まった配信の報告など、写真自体の見た目が絶景でなくとも「いいな、楽しそうだな」などと思えるものがこの「意味としてのSNS映え」に該当するのです。

一時、爆発的にブームとなった「clubhouseに招待されました」報告もこちらの意味としての映えの一種になるでしょうか。これも「呼んでくれる友達がいる」ことを暗にアピールできるからですね。



  • 2つを組み合わせた最強の映えスポット:ナイトプール
ここまで「A:存在としてのSNS映え」「B:意味としてのSNS映え」を見てきました。
そしてこの2つを組み合わせた最強の映えスポットが存在し、大流行を起こしました。それが「ナイトプール」です。


このような文脈で人気を博しているのが、先に少し触れたナイトプールだ。

ある調査によれば、若年層は海に対して親しみを持ちづらくなっているそうだが、
その一方でオシャレなナイトプールに行くことは流行歌しているという対比が見られる。

しかもナイトプールでは泳ぐことが「マナー違反」とされており(!)、基本的にはゆっくりたゆたいながら楽しくセルフィ―を撮ることが正しい所作であるという暗黙のコンセンサスが存在するようだ。

(A)の要素もありつつ、
水着になって連れそえる友達や仲間がいることを示す(B)の側面
もある。

SNS映えが誘引したムーブメントだと言って差し支えない。

なお、執筆(2017年8月)時点では#ナイトプールは約5万8,000件確認された。
(p78-79,天野,宣伝会議,2017)



ナイトプールへ行くということは、
「フォトジェニックな写真を撮りながら」「自分には友達、仲間がいることをアピールできる」チャンスとなります。

前回の記事で少し触れたように、令和の人々は行動をする際に「それがどうシェアできるか」ということまでもを頭に入れて選択をするようになりました。
そこでAとBの要素を同時に満たすことのできるナイトプールは非常に優れた付加価値を持っており、ブームが起きたのは必然だったのです。


しかしながら、こうしたブームは急速に移り変わります。
ナイトプールやカラーランなどは「狙ったインスタ映えすぎる」「あざとい」と言った側面も持ちあわせており、批判を恐れて控え目になる人も現れ、映えのトップランナーではなくなりつつあります。(そもそもコロナ禍ですし)


今後もその時の流行りのビジュアルコミュニケーションの中身を追いかけていくことで、世の中の「憧れ」を見ていくことが出来るのではないかと考えます。


これも少し前の話になりますが、ナイトプールよりもっと手軽な友達との双子ダンス動画などがBの要素を強く意識した「映え」コミュニケーションとして盛り上がっています。


物質的な豊かさと切り離された私たちミレニアル世代以下は、Aの存在としての映え以上にBの意味としての映えを重視する傾向もみられます。

コロナ禍で加速したそれはもはや、現実にとどまらず仮想空間へと舞台を拡大しつつあるのではないかと私は考えます。


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ホストクラブがアフターでゲームをするという話もあるぐらい、コロナ禍の現在ではゲームが新たな体験として盛り上がっています。

とくにAPEXに代表されるバトルロワイアルゲームでは友達や仲間とチームを組んで戦います。
激戦の様子やチャンピオンになった写真や動画を共有する方も多いですが、
楽しくボイスチャットをする様子なども合わせてシェアすることで、ナイトプール同様にAとBの要素を合わせて発揮しているのではないかと私は思っています。


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「パッと見」での映えと、「うらやましい意味」としての映え

これからもSNSはますます盛り上がっていくと思いますが、その対象を次々と変えながらも、こうした人間の根源的な部分に基づいて、新しい投稿といいねが次々と生み出されていくのではないかと思います。


その強い力は時には身を滅ぼしかねないほどのもの。
しかしながら、人間誰もが自然に抱く気持ちでもあります。

少し俯瞰的にそれを見ながらも、自分のなかのその気持ちを隠さず自然に肩の力を抜いて楽しむ。
そんな人生を豊かにするSNSとの付き合い方が出来たらとてもすてきだと思います。